蔵干(ぞうかん)とは、“地支のなかに内蔵されている干”のことです。 なかなか複雑な概念ですが、四柱推命で詳細に鑑定する際には蔵干は重要な役割を果たします。 以下に順序だてて説明していきます。
まずは、命式の具体例で蔵干を確認してみましょう。 四柱推命の命式は、天干4字、地支4字の八字で構成されます。 命式はこの八字が全てですが、蔵干は八字のうちの地支のなかに内蔵しています。
例えば、上記の命式の場合、 「申」のなかには「壬」、「亥」のなかには「甲」、「未」のなかには「乙」、「卯」のなかには「乙」が、それぞれ蔵干として内蔵しています。
ここで注意が必要なのは、上記の命式では例えば地支「未」から蔵干「乙」を取り出していますが、 地支が「未」ならば必ず蔵干が「乙」になるわけではなく、命式によっては「丁」や「己」になる場合もあるという点です。 これは、蔵干が季節の移ろいに合わせて変化していくものだからです。
同じ十二支の期間に生まれた人同士でも、 より早く生まれた人とより遅く生まれた人とでは、時間経過によって少しずつ季節が変化しているはずです。 時間経過によって季節が変化していれば、それに応じて蔵干が異なってくるのです。
蔵干は、十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)のいずれかで表しますが、 ひとつの地支にひとつの蔵干ではなく、ひとつの地支のなかに2~3種類の蔵干が含まれます。 季節は時間の経過とともにグラデーションで変化していくので、ある瞬間の地支に含まれる蔵干はひとつだけではないのです。
太陽や惑星などの天空は常に一定の速度で正確に変化していきますが、 天空が変化したのと同じタイミングで地上の季節が変化するわけではありません。 天空の変化に連動しながらも、地上では様々な要素が複雑に影響を与え合いながら季節がめぐっていきます。 天干・地支・蔵干のエネルギーが交じり合っているなかで人は誕生します。
以下は、それぞれの地支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)が内蔵する蔵干を、一覧表にまとめたものです。
地支 | 余気 | 中気 | 本気 | |
---|---|---|---|---|
春 | 寅(とら) | 戊 | 丙 | 甲 |
卯(う) | 甲 | 乙 | ||
辰(たつ) | 乙 | 癸 | 戊 | |
夏 | 巳(み) | 戊 | 庚 | 丙 |
午(うま) | 丙 | (己) | 丁 | |
未(ひつじ) | 丁 | 乙 | 己 | |
秋 | 申(さる) | 戊 | 壬 | 庚 |
酉(とり) | 庚 | 辛 | ||
戌(いぬ) | 辛 | 丁 | 戊 | |
冬 | 亥(い) | (戊) | 甲 | 壬 |
子(ね) | 壬 | 癸 | ||
丑(うし) | 癸 | 辛 | 己 |
上記の表は、春夏秋冬の順に「寅」から並べています。 蔵干は四季の移り変わりによって変化していくものなので、 「子」から並べるよりも春夏秋冬の順に「寅」から並べた方がイメージが掴みやすいかもしれません。
上記の表は、蔵干のとり方のひとつです。 「午」の蔵干に「己」をとるかどうか、「亥」の蔵干に「戊」をとるかどうかなど、蔵干のとり方には諸説あるようです。
ひとつの地支には、余気の蔵干・中気の蔵干・本気の蔵干が内蔵しています。 これらは、季節の進み具合によって余気の蔵干が盛んになる時期から、 中気の蔵干が盛んになる時期を経て、 本気の蔵干が盛んになる時期へと、その瞬間ごとに盛衰のバランスが変化していきます。
前の季節における本気は、現在の季節では余気として影響を残します。 やがて時間の経過とともに余気は衰退していき、本気が盛んになっていきます。 そして、現在の季節における本気は、次の季節の余気として影響を残す…という具合に循環します。
中気は余気と本気の中間にある気です。 地支によっては中気がない場合もありますが、これは春夏秋冬の各季節のピークとなる地支「卯」「午」「酉」「子」の場合です。 各季節のピークには本気と同一の五行の干が盛んになり、 季節の変わり目に盛んになる土性の干は存在感を無くすのです。
例えば、春の地支は「寅」「卯」「辰」ですが、初春の「寅」には土性の戊(つちのえ)が余気として内蔵されます。 春のピークとなる「卯」なら、木性のみで土性は内蔵しません。 晩春となり季節の変わり目の「辰」なら、土性の戊(つちのえ)が本気として内蔵されます。
いま取り上げたのは春の例ですが、他の季節でも同様です。 春は木性、夏は火性、秋は金性、冬は水性、季節の変わり目は土性のエネルギーが盛んになりますが、 各季節のピークとなる「卯」は木性のみ、「午」は火性のみ、「酉」は金性のみ、「子」は水性のみとなります。
最後に、四柱推命の鑑定において蔵干をどのように使うのかについて簡単に触れておきます。
四柱推命の鑑定では、蔵干はその人が内面的に持っている気質であると解釈します。 また、命式中の天干と同じ五行の蔵干があれば、その天干が強められると観ます。 蔵干は、特定の天干を強める役割をするのです。
蔵干の影響をどの程度重視するかは、占い師によって異なります。 蔵干はひとつの地支に2~3個含まれますが、すべての蔵干を考慮することもあれば、最も盛んな蔵干だけを利用することもあります。 すべての蔵干を考慮するほうが詳細な鑑定ができるかもしれませんが、ディテールに振り回されてかえって大局を見失うこともあるかもしれません。